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1年前。彼女は人妻であった。短大を卒業して半年後に、親に勧められるまま好奇心で臨んだお見合いの相手の、自然体な物腰に何となく魅かれるものを感じ、やがて犯歳の秋で結婚した。Aクンは彼女とため年である。彼女が結婚した時、Aクンも、犯歳の秋であった。大学4年である。Aクンと彼女は、Aクンの大学の軟派なサークルの仲間として、何となくつきあい始めたが、何となく半年後に別れ、いがみ合うこともなく、ただのサークル仲間としてのつきあいにもどった。ぬるま湯のような仲間意識の気楽さにかまけると、性々にして燃えあがる恋愛感情へと発展しない。人はむやみに冒険を望まない。Aクンと彼女の場合が、まさにそれで、疑似恋愛、それもほんの入り口に足を踏み入れた程度の、稚拙な交際であった。短大生である彼女は、ひと足先にサークルを抜けた。しばらくしてAクンの耳に、彼女の結婚、が噂によって知らされる。Aクンは、その時、ほんの少し胸に痛みを感じた、と言う。もしかしたら俺は、彼女が好きだったのかもしれない、と。まぬけな男である。そう気がついたところで通勤快速高尾山口行きのように過ぎていく現実をAクンはプラットフォームで、ただ見送るだけであった。彼女は幸せな結婚生活を送っていた。6歳上の優しいダンナは名の知れた会社の有能なビジネスマンで、いちゃもんのっけようのない新婚生活だった。子供ができないことだけが、しいて言えば悩みだったが、もちろんあせるほどの年齢ではない。新婚2年目、それぞれ社会人となったAクンたちの卒業を名目に、サークル仲間の集いがあり、彼女は久々に、Aクンに会った。

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